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映画研究会

大学に入学した時のことだった。
ヒロミは上京したばかりで友達も少ないから何かのサークルに入ろうと思っていた。
高校時代は体育会系の部活をこなしていたが、自由になる時間が少なく、大学に入ったらもっと楽なサークルで遊びが主な活動のサークルに入りたいと思っていたのだ。

高校時代は時間も自由になるお金も少なく大好きな映画を見に行くこともあまりできなかったので、映画関係のサークルもいいなと思い、そんなサークルからあたってみることにした。

入学した時にもらった別冊のパンフレットにサークルの紹介が出ており、その中に一つだけ映画関係のサークルがあった。とにかく映画を見ることに主眼を置いているらしい。そこに書いてある地図を頼りにサークルの部室がある場所まで行ってみた。

サークルのある部室は古い校舎のゼミ用の教室を使っていた。
白い壁は薄汚れており、柱には手垢がついていて壁もところどころヒビが入っている。
ヒロミは地図を見るのが苦手だったがなんとか部室の前までたどり着いた。

グレーのペンキで何回も塗り重ねられた扉にサークルの名前が書かれたプレートが貼り付けられていた。

「映画研究会 UNICORN」

ゆ、ユニコーン??

その文字の下にはデッサンが崩壊している一角獣のイラストが描かれていた。


ユニコーンって、何?


ヒロミはドアのノブに伸びていた手をさっと引っ込めた。
大丈夫かな?と不安になったのだ。
その時、


なんか御用ですかぁ?

後ろから声がした。
ヒロミはビクッとして振り返りその声の持ち主の顔を見た。
ひょろっと背が高く、髪は無造作ヘアというよりは無造作過ぎる感じに思えた。
たぶんユニクロで買ったであろうシャツにジーンズ、さわやかな感じもしたがどちらかというとぶっきらぼうな感じで話しかけづらい。

新人さん?入部希望なの?

その男はドアのノブをつかんでドアを開けながらそう言った。
ヒロミはたじろいで小さく二、三歩下がり、

は、はい。

と答えた。
この時にはすでに70%帰りたいと思っていた。

その男は部室に入り一枚の紙を取り出して、名前と連絡先、所属学部をその紙に書くように言った。
ヒロミはとりあえず書いた。とりあえず書いておいて、いいサークルが他に見つかればそれに入ればいいと思ったのだ。

記入し終えたヒロミはその紙をその男に手渡した。

今度サークルの説明会やるからその時にいろいろ話聞けると思うんでその時きてください。今日はとりあえずそれだけです。
じゃぁ。

そういうとその男は振り返りセーブしてあったゲームをやり始めた。

ヒロミは唖然としたが、そういうもんだろうと思いなおして挨拶をして部室を出た。
振り返るとデッサンの崩れたユニコーンがこっちを見ているように思えた。

後でわかったのだがサークルの名前のUNICORNとは初代の部長がUNICORNというバンドのファンだったらしく周囲の反対を押し切ってつけたものらしい。


これがアキラとの最初の出会いになった。

小説 青い魚(下書き)

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映画研究会(2008年3月26日)
上司(2008年3月20日)
転機(2008年3月18日)
夕焼け(2008年3月 5日)
電車(2008年2月27日)